PCL · PLC · MLKI · RESIDENTS & FELLOWS
PCL・PLCと多靱帯損傷
後方・回旋不安定性、複合靱帯損傷と神経・血管の評価を術前計画につなげます。
PCL · PLC · MLKI · 01
孤立性PCL損傷:後方移動量と症状を踏まえた判断
PCL損傷では、まず孤立性損傷か、PLC・側副靱帯・ACLの損傷を伴うかを確認します。屈曲した膝の前面に衝撃を受けた病歴、posterior sagとposterior drawer、大腿四頭筋の収縮によって脛骨が前方へ戻る所見を関連付けて解釈します。脛骨がすでに後方へ落ち込んでいるとACLが弛緩しているように見えることがあるため、前方不安定性を判断する前に脛骨の開始位置を確認します。
MRIは断裂部位や合併する半月板・軟骨損傷を示しますが、形態的な連続性が見えるだけで機能的安定性が正常と判断しません。後方ストレス画像では左右差と撮影条件を記録し、疼痛、歩行や階段での不安定感、活動の要求度と併せて評価します。後方移動量が大きくてもPLC損傷を必ず伴うわけではなく、回旋・内反不安定性は別に確認します。
急性孤立性PCL損傷の初期治療では、保護とリハビリテーションを含む保存的アプローチを検討できます。ドイツ膝関節学会の2025年コンセンサスは、不完全断裂・完全断裂のいずれでもこの初期アプローチを支持していますが、関連するエビデンスの多くは低い水準です。後方移動量の数値だけで手術を決めるのではなく、裂離骨折、症候性不安定性、活動目標、リハビリテーションへの反応、合併病変が治療選択にどう影響するかを説明します。
再建を検討する際は、後方移動量の減少と患者が実感する機能回復を、それぞれ目標として記載します。孤立性の重度PCL損傷でPLCを同時に再建する利益を当然とは考えません。2025年の小規模な後ろ向き比較研究では、PCL単独再建とPCL・PLC同時再建の結果に差は認められませんでしたが、すべての損傷で両者が同等であるという証拠には広げません。確認された合併不安定性とアライメントの問題に応じて手術範囲を決めます。
PCL · PLC · MLKI · 02
PLC損傷:回旋・内反不安定性と合併靱帯損傷の関係
PLCは、腓骨側側副靱帯、膝窩筋腱、膝窩腓骨靱帯などを含む後外側の安定化構造です。内反と外旋に対する制動がともに損なわれることがあるため、ひとつの靱帯のMRI信号だけで評価を終えません。受傷機転、後外側の疼痛、腓骨神経の知覚・運動機能、歩行中のvarus thrustと過伸展を関連付けて確認します。
診察では、dial test、posterolateral drawer、external rotation recurvatum、内反ストレステストが、互いにどの情報を補うかを確認します。膝の角度、脛骨の開始位置、加える力が変わると検査結果も変わるため、左右を比較する条件をそろえます。30度と90度での外旋の差は合併PCL損傷を考える手掛かりですが、特定の角度で陽性という理由だけで損傷構造を確定しません。
ストレスX線画像とMRIは、臨床的に確認された不安定性の方向と程度を補足します。慢性損傷では、両下肢全長画像で骨性内反と外側関節裂隙の開大を分けて評価します。見逃されたPLC不安定性は、十字靱帯再建後も異常な荷重を残す可能性があるため、十字靱帯再建の計画に回旋・内反安定性も含めます。
2025年の国際コンセンサスは、確認された完全なgrade III PLC損傷で再建を支持し、重度損傷を補強や再建なしに単独縫合する方法には反対しています。急性の単一構造の軟部組織裂離など、縫合を検討できる状況では、組織の状態とほかの損傷を併せて判断します。すべての患者にひとつの再建術式が最適であるという合意はないため、再建する構造、神経の保護、骨孔同士の干渉、リハビリテーションの制限を、具体的な損傷形態に合わせて計画します。
PCL · PLC · MLKI · 03
膝関節脱臼と複数靱帯損傷:血管評価の優先順位
膝関節脱臼は、来院前に自然整復され、画像ではアライメントが正常に見えることがあります。高エネルギー損傷だけでなく、ほかの受傷状況でも複数靱帯損傷と神経血管損傷を関連付けて考えます。来院時の膝の形状よりも、受傷時の変形、不安定性、皮膚・軟部組織の状態、足部の灌流が救急での判断を左右します。
整復の前後には、足部の脈拍、皮膚の色・温度、毛細血管再充満、腓骨神経・脛骨神経の知覚・運動機能を再度記録します。脈拍を触知できるという事実だけでは、膝窩動脈の内膜損傷や遅発性血栓の可能性を除外しません。虚血所見がある、または血管損傷が疑われる場合は、靱帯のMRIよりも緊急の血管評価と専門チームの判断を優先します。
2024年のMLKI国際コンセンサスは、高エネルギー損傷や両十字靱帯・PLC損傷で、CT血管造影を行う判断の閾値を低く設定することを提案しています。一般的な四肢外傷に関する2025年のESVSガイドラインは、血管損傷の診断・除外検査としてABIを使用することを推奨せず、臨床診察で有意な損傷を除外できなければ、直ちにCTAを行うことを推奨しています。そのため、従来のABI 0.9という基準だけで、すべての患者に血管損傷がないと説明しません。
四肢の灌流と軟部組織に関する緊急の問題を解決した後、靱帯、半月板、骨折の治療順序を決めます。関節安定性の早期確保と関節拘縮のリスクを併せて検討し、開放性損傷、血管処置、皮膚の状態、関節可動域によって手術時期が変わる可能性を考慮します。可能であれば一期的再建を優先するという合意もありますが、すべての損傷を一定の日数以内に手術する固定的な規則として適用しません。
PCL · PLC · MLKI · 04
慢性PLC不安定性と内反:アライメント矯正と再建の順序
慢性後外側不安定性における内反アライメントは、静的な骨形態と動的な外側関節裂隙の開大が組み合わさった結果の場合があります。Primary・double・triple varusという表現は、これらの要素を区別するのに役立ちますが、分類名だけで骨切り術の矯正量を決めません。下肢全長画像、内反ストレステスト、歩行中のvarus thrust・recurvatumを、同じ治療計画の中で解釈します。
靱帯再建だけでは荷重軸は正常化しません。骨性内反が有意に残っていると、再建組織に内反荷重が持続する可能性があるため、変形の部位と外側靱帯の弛緩をそれぞれ評価します。同時に、軟骨・半月板の状態、矢状面アライメント、PCL・ACLの機能を確認し、疼痛と不安定性の原因が同じかを区別します。
内反と慢性PLC機能不全を伴う選択された患者では、先に骨切り術を行い、回復後に残存不安定性を再評価する段階的アプローチを検討できます。2007年の21例の前向き研究では、一部の患者は骨切り術後に機能が改善し、追加のPLC再建を受けませんでしたが、複数靱帯損傷や高エネルギー損傷では追加再建がより多く必要でした。この結果は、すべてのPLC損傷で骨切り術が再建に代わることを意味しません。
矢状面のposterior tibial slopeも検討する場合は、生体力学的な仮説と実際の患者の結果を区別します。PCL再建後の結果を分析した2024年の研究では、slopeによる患者報告アウトカムや失敗率の有意な差は認められませんでした。そのため、特定のslopeの数値を普遍的な手術目標として示すのではなく、冠状面・矢状面の変形、残存する靱帯機能、骨切り術後の関節可動域と症状に基づいて、次の再建の必要性と時期を改めて決めます。